日本の特別地域 特別編集94 これでいいのか川崎
日本の特別地域
川崎市と聞いて、世間の人々が連想するのは何だろう。
工場がたくさんある空気の汚い街、たびたび凶悪事件が起きる治安の悪い街、生活保護受給者やホームレスが多く棲みつく貧しい街……。 開発が進み、住みたい街として人気が高まる一方で、こうした暗いイメージは、中高年の世代を中心に、いまなお根強く残っているように思える。加えて、最近では在日外国人に対するヘイトスピーチ問題に揺れたり、武蔵小杉のタワーマンションの水害に対する脆弱性が露見したりと、あまり良くない意味で、川崎は何かと話題の尽きない街だ。 川崎の悪いイメージの大半は、なんらかの事件などがきっかけで世間に広まったものだが、大手のメディアが好んで発信するショッキングなニュースは、川崎という街の一側面を切り出したものに過ぎない。 たしかに、川崎がデンジャラスあるいはスキャンダラスな要素を多分に含んだ街であることに疑いの余地はない。しかし、街の大部分を形作っているのは、そこで暮らす名も無き人々の営みであり、実際の川崎がどんな街で、これからどう変わろうとしているのかを知ろうとしたら、そうした地道な暮らしにこそ目を向けるべきだろう。 川崎には、貧困や格差など、現代日本の縮図ともいうべき問題の数々が山積していると言われている。つまり、川崎の問題について考えることは、日本の将来を占い、我々が向かうべき方向性を模索することにも繋がるのだ。 本書では、川崎がリアルタイムで直面している問題の数々、つまり「闇」の部分を取り上げると同時に、そんな環境から抜け出そうともがき続ける「光」の部分にも焦点を当てていく。 果たして、このカオスでエネルギッシュな街は、我々に何を教えてくれるのか。最新の現地レポートを交えて、川崎の真実に迫っていくとしよう。