花も団子も 春呼ぶ和菓子と奈良の町
ことのは文庫
これは、奈良で小さな和菓子屋を営む人間とあやかしの〈腐れ縁〉バディが、店を訪れるお客さんと共に世界に「春」を取り戻す物語。
奈良の古びた和菓子屋『ことこと庵』を預かる新米和菓子職人の紺野旭(こんの・あさひ)には「天敵」がいる。それは店主兼和菓子作りの師匠の有楽(ゆうらく)という妖(あやかし)だ。店を放ってほっつき歩くこの天敵はたまに帰ってくると、弟子が必死で作った菓子を勝手に「面白い(が謎の)和菓子」に作り変えたり――。古より伝わる和菓子を愛する人と妖の凸凹バディが、ぶつかり合いながらも店を訪れる悩めるお客さんの心を優しくほどいていく。しかし、そんな二人にはお互いが知らない、決して知られてはならない「秘密」があった。