下の階にはツキノワグマが住んでいる
ことのは文庫
ゆり子さんの越した部屋の階下には、お人よしのツキノワグマさんが住んでいた。ネット小説大賞受賞のもふもふ小説、待望の書籍化!
「今すぐ入居できる物件は、残念ながらこちらだけです」住んでいた賃貸マンションで火事があり、
急遽引っ越すことになった頑張り屋の社会人・ゆり子が紹介されたのは、
「築35年・動物入居可能(ペットの意味にあらず)」の物件だった。
なぜならば、ここは、人間と「人の言葉をしゃべる動物」たちが仲良く共存する、そんな世界だからだ。
ゆり子の部屋の階下に住んでいたのは、胸の三日月模様が印象的な、人(?)の好いツキノワグマ。
誰かとコーヒーを飲むのが大好きで、はちみつケーキが大好きで、ヒグマさんの作るビールが大好きで、
お鍋が大好きで、冬眠の前にはクリスマス・お正月・バレンタインの贈り物などを一通り済ませてから眠りにつく。
そんなのんびりとしたクマと日々を過ごすうち、ゆり子の少し疲れた心は優しくほぐされていく。
そして彼女はいつしか、ずっと背を向けていた母と向き合ってみようと自然と思えるようになり――。