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「転生したら剣でした」著者書き下ろしのショート・ストーリーをプレゼントします。
「はーい、皆さんこんにちはー。ラッスンお兄さんだよー」
「「「こんにちはー」」」
とある村の中央にある、小さな舞台。普段は村長からのお知らせの際や、祭りの出し物などで使用される場所である。今日はその舞台の上に、二人の男女の姿があった。因みに、最前列は村の子供たちである。
「いい挨拶だねー。今日は僕と彼女が、皆に戦闘の怖さを教えるよ! 紹介するね。彼女はフランお姉さん! なんと冒険者さんだよー」
「ん。冒険者のフラン。よろしく」
舞台の上からフランが挨拶すると、子供たちがざわつきだす。
「えー、嘘だ―」
「そんな小さい人が冒険者なわけないよー」
「本当。これから証拠を見せる」
そう言って、フランが俺を抜き放った。
「じゃあ、行く――」
発端は、この村で簡単な採取依頼を受けたことであった。依頼を達成した直後、村の青年団に所属しているというラッスンに話しかけられたのだ。彼らはある啓蒙活動に協力してほしいと依頼してきた。
魔獣の出没する森に近いこの村では、生きるには戦う力が必要だ。しかし、子供には武器の恐ろしさ、暴力の怖さも知ってほしいという。そこで、定期的に冒険者に依頼して、力の怖さを子供に教えているらしい。
やること自体は簡単だ。子供たちの前で剣舞を披露したり、魔術を使ったりするだけである。最後に、ラッスンに極威力の小さい攻撃を当てて終わりだった。人がいたがる様を見せようという意図がるらしい。
まあ、急いでいるわけではなかったし、ラッスンの熱意も伝わってくる。結局俺たちはその依頼を受けることにしたのであった。そして、今舞台の上で剣舞を披露しているわけだが――。
「……」
子供たちは声もない。だって、早過ぎる上に超迫力があるのだ。俺が振られるたびに、衝撃波が出てるしね。
涙目の子供までいる。しかし、フランへの依頼は、剣舞、魔術、攻撃だ。
「じゃあ、次行く」
フランがスタン・ボルトとバースト・フレイムを放った。爆炎と電撃が、轟音と共に子供たちの頭上で炸裂する。当たってはいないが、風圧は感じたことだろう。
ああ、あの男の子漏らしたぞ。あっちの女の子は気絶したか? というか、保護者達までパニック寸前だ。ラッスンの顔色も悪い。なにせ、フランが俺を構えて彼を見つめているからね。
「えっと、フランさん?」
「いく」
「ちょ、ま――ぎゃあっ!」
軽い攻撃だよ? フランにとっては、だけど。舞台の上から十メートルくらい吹っ飛んで、地面の上で痙攣しているラッスンの姿を見て、完全に村人たちが恐慌に陥ったな。
『まあ、戦いの怖さは十分教えられた……かな?』